2008 Fiscal Year Annual Research Report
効果的に生分解性プラスチックを分解する酵素の触媒機構
Project/Area Number |
19750126
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
榮 慶丈 Nagoya University, 理学研究科, 研究員 (20397988)
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Keywords | 酵素反応 / 高分子・物性 / 酵素 / 蛋白質 / 生物物理 |
Research Abstract |
本研究では, 生分解性プラスチックをこれまで知られている酵素よりも効果的に分解することが知られている酵素CLE(Cutinase-like enzyme) について計算化学的アプローチによる解析をおこなった。CLEはX線結晶構造情報から, 触媒活性に重要だと考えられる部分として, Ser85, His180, Asp165の側鎖と, Thr17, Gln86の主鎖の-NHがあり, セリンプロテアーゼと同様の触媒機構を持っていることが分かる。そこで本研究ではCLEの計算をおこなう上で, 活性に重要な働きをする部分を含んだ最大86原子については, 量子力学を基にした量子化学的計算手法を用い, それ以外の部分については古典力学を基にした分子力場による計算をおこなうことで大規模計算を実現するQM/MM法(B3LYP/6-31G** : AMBERレベル) を用いて解析をおこなった。その結果, Thr17の側鎖の水酸基や活性部位付近に存在する水分子(結合水) が触媒反応へ関与することで触媒反応のエネルギー障壁を下げるにとが新たに分かった。Thr17の側鎖の水酸基は, 常に触媒反応中において, 基質のカルボニル酸素に直接水素結合することで, 律速過程だけではなく触媒反応全体が安定化する。さらに触媒反応に結合水が加わることにより, 反応全体の安定化に加え, Thr17の側鎖が結合水と水素結合し, これまでの研究で律速過程であると予想されていた水分子の基質への求核攻撃反応のエネルギー障壁が特に減少することがわかった。以上の結果より, 通常のセリンプロテアーゼの反応機構に加えて, これら2つの要因があることによってCLEは効果的に生分解性プラスチックを分解できると考えられる。
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Research Products
(7 results)