2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19750171
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
増井 敏行 Osaka University, 大学院・工学研究科, 准教授 (00304006)
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Keywords | 環境調和型 / 黄色顔料 / 酸化セリウム / 酸化ビスマス / 複合酸化物 / バンドギャップ / 可視光吸収 / 混成軌道 |
Research Abstract |
黄色無機顔料はプラスチックの色味の調整や、道路のセンターラインなどのトラフィック用顔料として用いられるため、特に需要が大きいことで知られている。しかしながら、現在、工業的規模で用いられている黄色無機顔料である黄鉛(PbCrO_4)、カドミウムイエロー(CdS)、ニッケルチタンイエロー(TiO_2-NiO-Sb_2O_3)などには、有害な元素(Pb, Cr, Cd, Ni及びSb)が含まれているため、構成元素として有害な元素を含まない無害な代替顔料の開発が求められていた。 本研究では、Ce_<4f>-O_<2p>軌道間の電荷移動吸収により淡黄色となるCeO_2-SiO_2複合酸化物を母体として選択し、その格子内にBi^<3+>とAl^<3+>を固溶させ、黄色の着色と耐熱性を併せ持つ新規な環境調和型黄色無機顔料を開発した。 本研究で合成した試料はいずれも鮮やかな黄色を呈することがわかった。なかでも、複合酸化物の組成がCe_<0.35>Si_<0.24>Bi_<0.32>Al_<0.09>O_<1.795>のときに、波長435〜480nmの青色に相当する可視光を極めてよく吸収することが明らかとなった。青色と黄色は補色の関係にあるので、この新顔料は鮮やかな黄色を呈すると考えられる。この試料の黄色度を色彩色差計にて評価したところ、市販の環境調和型黄色顔料であるプラセオジム黄よりも大きな黄色度を示した。なかでも、850℃で焼成した試料が青色光を最も効率よく吸収することがわかった。赤外吸収スペクトル測定の結果より、この試料において、BiO_6ユニットのBi-O振動に帰属される吸収(約850cm^<-1>)が最も大きく、Bi6s軌道とO2p軌道の混成軌道形成の効果が最大となることが明らかとなった。これが黄色の着色が大きくなる原因であることがわかった。さらに、Ce_<0.35>Si_<0.24>Bi_<0.32>Al_<0.09>O_<1.795>試料は900℃で焼成してもその構造を安定に保持し、高い耐熱性を有することが明らかとなった。
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