2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19750173
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
伊田 進太郎 Kumamoto University, 大学院・自然科学研究科, 助教 (70404324)
|
Keywords | ナノシート / 発光 / 蛍光 / 希土類 / ユーロピウム / テルビウム / 層状酸化物 / 剥離 |
Research Abstract |
酸化チタンナノシートとEu^<3+>が交互に積層した層状化合物に酸化チタンのバンドギャップ以上の光を照射すると、Eu^<3+>の赤色発光が得られる。この発光は、酸化チタンナノシートのバンドギャップエネルギーが層間Eu^<3+>に移動することによって得られる。さらに、興味深いこととして、通常、水和によって消光しやすいEu^<3+>の発光が層間水の量が増えるにしたがって異常に増大することがこれまでの研究でわかっている。そこで本研究では、その発光のメカニズムの解明と、新しいナノシート発光材料を開発することを目的とした。その結果、Eu^<3+>の異常発光において、層間水が酸化チタンナノシートからEu^<3+>へのエネルギー移動を促進していることが明らかとなった。ここでは、Eu^<3+>と水分子の水和による消光現象も同時に起こっているが、エネルギー移動を促進する効果の方が強いために、層間水の増加とともにその発光強度は増大する。また、新しいナノシート発光素子として、酸化物ナノシート/Ln^<3+>電極を用いた光電気化学フォトルミネッセンス素子を開発した。この素子に+1.2Vと-1.2Vの電圧パルスを印加するとTb^<3+>やEu^<3+>の発光をON/OFFさせることができた。さらに、新しいナノシート材料として、赤、緑、青にそれ自身が発光するナノシートを世界に先駆けて開発した。このナノシートの発光は表面吸着物質によって非常に影響を受けやすく、発光センサーへ応用展開できる可能性がある。実際、酸化チタンナノシート/Eu^<3+>の発光はpH変化に応答し、低いpHでは発光せず、高いpHでは発光することを見出した。 以上、本研究では、水分子が与える希土類イオンの異常発光のメカニズムが明らかとなり、新規なナノシート発光材料、発光制御技術を開発することができた。これらの研究成果は、新しい無機EL素子の開発やセンシング素子の開発へと展開すると期待できる。
|