2008 Fiscal Year Annual Research Report
キチン・キトサンへのラクチドのグラフト化による環境調和型高分子材料の設計
Project/Area Number |
19750188
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Research Institution | Ibaraki National College of Technology |
Principal Investigator |
宮下 美晴 Ibaraki National College of Technology, 物質工学科, 准教授 (00293259)
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Keywords | キチン / キトサン / 乳酸 / ラクチド / グラフト共重合 |
Research Abstract |
本研究では、環境調和型高分子材料の創製を意図して、キチン・キトサンをオリゴ乳酸鎖で化学修飾したグラフト化物を合成し、その構造や物性を解明する。前年度は、キチンまたはキトサンへ直接ラクチドを作用させてのグラフト化を試みたが、枝鎖として導入されたラクチル基の量は僅かであり、キチン・キトサンの物性改善も効果的には達成されなかった。そこで今般、キトサンを一旦誘導体化した後にグラフト化を行うという手順での合成を試みた。まずキトサンに無水フタル酸を作用させて、フタロイル化キトサンを合成した。^1H NMRデータより、フタロイル化反応が進行したこと、およびキトサンのくり返し単位1つあたり平均して約2個のフタロイル基が導入されたことを確認した。次に、得られたフタロイル化キトサンをN, N-ジメチルアセトアミドに溶解させ、ここにL-ラクチドおよびLiClを加え、窒素雰囲気下、125℃で撹拌し、ラクチドの開環グラフト化反応を行った。IR測定の結果、得られた生成物は、キトサン幹鎖にオリゴ乳酸鎖が導入されたグラフト化物であることを確認した。このフタロイル化キトサン-オリゴ乳酸系グラフト化物は、キトサンおよびフタロイル化キトサンのどちらも不溶な溶剤に対して良好な溶解性を示した。またこのグラフト化物に対し力学試験を行ったところ、おそらくフタロイル化の影響により若干脆くはなるが、弾性率は向上する傾向にあることが示唆された。このように、キトサン幹鎖に対してオリゴ乳酸鎖を導入すると、物性の改変がもたらされる可能性が示唆された。現在、フタロイル化キトサン-オリゴ乳酸系グラフト化物からの脱フタロイル化を試みており、最終的な目的物であるキトサン-オリゴ乳酸系グラフト化物が得られたら、熱・力学物性、および分解性などをさらに詳細に調べ、環境調和型高分子材料としての利用の可能性を探る。
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