2007 Fiscal Year Annual Research Report
高熱電変換性能を有する高配向有機薄膜作製の基礎研究
Project/Area Number |
19760002
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
林 慶 Tohoku University, 大学院・工学研究科, 助教 (70360625)
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Keywords | 有機分子 |
Research Abstract |
本研究の目的は原材料が豊富であり、成型加工が容易、塗布などの簡単な操作により大面積の膜を安価に作製可能という利点を持つ有機物の熱電材料としての可能性を明らかにすることである。今年度はSi基板上に成膜した銅フタロシアニン(CuPc)薄膜の熱電変換性能を評価した。パラメータとして成膜時の基板温度、膜厚、蒸着速度、基板を変えたところ、次の結果を得た。蒸着時の真空度は1×10^<-4>Pa以下である。 1、CuPc薄膜は針状結晶で構成されており、結晶構造はα型でb軸が基板に対して平行になっていることを確認した。 2、基板温度が462K以下では、温度上昇とともに結晶サイズが大きくなるのに対し、462K以上ではCuPcが再脱離するため結晶サイズが小さくなる。これに対応して、電気抵抗率は462Kで成膜したものが最も低くなった。 3、0.3Å/sと0.03Å/sの2種類の蒸着速度で成膜したところ、蒸着速度が遅いほうが結晶サイズは大きくなることがわかった。 4、462Kの基板温度で成膜したCuPc薄膜の電気抵抗率は、膜厚が薄いものほど低くなった。このことからCuPc薄膜を熱電材料として利用する際には膜厚が薄いほうが良いことがわかった。 5、基板表面の微傾斜の有無によって配向性が変化させることはできなかった。 以上の結果を踏まえて、微傾斜無しのSi(001)基板上に基板温度462K、膜厚40nm、蒸着速度0.3Å/sの条件で成膜したCuPc薄膜の電気抵抗率とゼーベック係数を測定した。300Kにおける値は、1820μV/K、1.46×10^<-2>Ωmとなり、2.27×10^<-4>W/mK^2の出力因子が得られた。この出力因子は高性能の無機熱電材料と比較すると一桁小さいが、電気抵抗率を下げれば十分実用化レベルを達成できると考えられることから、有機熱電材料の可能性を示す結果である。
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