2008 Fiscal Year Annual Research Report
高熱電変換性能を有する高配向有機薄膜作製の基礎研究
Project/Area Number |
19760002
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
林 慶 Tohoku University, 大学院・工学研究科, 助教 (70360625)
|
Keywords | 有機分子 |
Research Abstract |
本年度は銅フタロシアニン(CuPc)に加えて、ペンタセン、テトラチアフルバレン-テトラシアノキノジメタン(TTF-TCNQ)薄膜を作製し、熱電性能を評価した。CuPc、ペンタセンについては、電気伝導率が低いためヨウ素ドープを試みた。また、基板にラビング処理を施し、成膜した薄膜の構造と熱電性能にどのような変化が現れるか調べた。得られた結果は以下の通りである。 1、CuPc薄膜にヨウ素をドープしたところ、1分程度で最大の電気伝導率に到達し、その後わずかに減少した。ヨウ素ドープを中断すると薄膜内のヨウ素が脱離するため電気伝導率は瞬時に低下し、ドープ前の結晶構造と電気伝導率を再現することがわかった。 2、成膜時の基板温度を変えて成膜したペンタセン薄膜の結晶構造を評価し、従来の報告どおり基板温度が高いほど薄膜内のバルク相/薄膜相の比率は増加し、結晶粒が大きくなることがわかった。基板温度を室温に保って成膜した薄膜についてヨウ素ドープを行ったところ、CuPc薄膜同様、電気伝導率は大幅に増加した。ヨウ素ドープを中断すると薄膜内のヨウ素は脱離するが、CuPcよりも脱離速度は遅いことがわかった。 3、ガラス基板上にTTF-TCNQ薄膜を成膜し、c軸配向していることを確認した。電気伝導率は従来の報告より30倍高い30S/cmを達成したが、ゼーベック係数は-10μV/Kとかなり低い値となった。これはa軸方向とb軸方向でゼーベック係数の符号が異なることを反映している。薄膜のSEM像には、長軸をb軸、短軸をa軸とする矩形の単結晶で敷き詰められており、2μm程度の大きさのドメインが見られた。 4、ラビングした基板上にCuPcとTTF-TCNQ薄膜を成膜した。前者ではラビング方向に沿った単結晶の成長が見られ、後者では平坦な薄膜の形成に成功した。特に後者ではラビング基板を用いた方が出力因子は10倍高くなった。
|