2007 Fiscal Year Annual Research Report
強磁性体から有機分子へのスピン注入による有機スピントランジスタに関する研究
Project/Area Number |
19760005
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
仕幸 英治 Japan Advanced Institute of Science and Technology, マテリアルサイエンス研究科, 助教 (90377440)
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Keywords | スピンエレクトロニクス / 強磁性体 / 有機半導体 / 磁場 / スピン注入 / スピン拡散長 / トンネル障壁 / 磁気抵抗 |
Research Abstract |
近年,有機スピンエレクトロニクスの研究分野が非常に注目されている.本研究では,スピン注入源である強磁性体と,有機分子との界面状態を制御しやすい平面型構造素子を用いて,強磁性体から有機分子へ効率良くスピンを注入し,素子の磁気抵抗効果を測定することによりスピン注入効果を観測することを目的とした.本年度の研究内容と成果を以下に示す. 1・試料作製 熱酸化膜付きSi基板上に電極間距離dを有する強磁性電極対を作製した.正負両電極の形状を変えることにより電極間に保磁力差を付けた.強磁性電極にはフェルミ面でのスピン分極率が大きく,大気中で酸化しにくいNi_<80>Fe<20>を用いた.dの値は,有機分子のスピン拡散長を考慮して,数十ナノメートルから数百ナノメートルに設計した.つづいて有機分子を,両電極をまたぐように成膜した.有機分子には発光性分子のAlq_3およびGaq_3を用いた.比較のために電極として非磁性体AuをNi_<80>Fe<20>のかわりに用いた素子も作製した. 2・特性評価 磁場中電気伝導特性評価装置により試料の磁気抵抗(MR)効果を評価した.有機分子にAlq_3およびGaq_3を用いたどちらの素子からも磁気抵抗効果が観測された.dの短い試料ほど大きなMR比を示した.一方,Au電極素子においては,MR効果は観測されなかった.以上のことはMRの起源としてAlq_3およびGaq_3分子自身からのMR効果は支配的ではないだけでなく,Ni_<80>Fe_<20>電極自身のMR効果もまた支配的ではないことを示した.MRの起源として,Ni_<80>Fe_<20>電極表面での局所的な磁化状態の影響が考えられた. 以上の成果を学会にて発表した.全5件の発表のうち2件(電力中央研究所ワークショップおよび,真空協会仙台研究例会)においては依頼講演を行なった.
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