2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19760007
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
山下 兼一 Kyoto Institute of Technology, 工芸科学研究科, 助教 (00346115)
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Keywords | 半導体光物性 / 半導体量子井戸構造 / 変調分光法 / 光学的異方性 |
Research Abstract |
閃亜鉛鉱型の結晶構造をとるIII-V族混晶半導体において、(110)方向の面方位を有する基板上に作製される1次元量子井戸構造では、異方的な原子配列に起因して面内での光学遷移強度に大きな異方性が生じることが知られている。特に基礎吸収端の光学遷移強度異方性については、1990年代を中心に実験・計算の両面から盛んに研究された時期があり、低閾値レーザへの応用が検討された。この例のように、対称性の操作という概念を伴う(110)面量子井戸構造は、電子的・光学的特性を制御する一つのアプローチ手段であると捉えることができる。本研究では、InP(110)基板上に成長したInAIAs/lnGaAs多重量子井戸構造における光学遷移強度異方性について実験的評価を行った。偏光フォトリフレクタンス法により、基礎吸収端はもとより、高次のエネルギー準位が関与した遷移に関する偏光異方性についても詳細な検討を行った。その結果、信号強度の異方性は井戸幅と遷移に関与する準位の量子数に依存することが実証された。また、Luttinger-Kohnハミルトニアンを用いた理論計算により実験結果は定性的に説明することができ、スピン軌道スプリットオフバンドのミキシングが異方性の変化に関わっていることが示された。同様の測定をInGaAs/InP量子井戸についても行ったところ、結晶性が比較的劣るために急峻な遷移信号は観測されなかったが、理論から予測されるエネルギー位置でInAlAs/InGaAsと同様の異方性が観測された。異なる材料系においても同様の結果が得られたことから、半導体量子構造の電子的・光学的特性を制御する手段として、対称性の操作という概念は有望であると考えられる。
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Research Products
(5 results)