Research Abstract |
Cu_2ZnSnS_4(CZTS)は太陽電池の光吸収層として最適な光学特性を持っていると同時に,Cu(In,Ga)Se_2の稀少元素In,GaをZn,Snで置換し,有毒元素SeをSで置換した環境負荷の少ない半導体材料である。本研究では低コスト化を目指して,非真空プロセスのひとつである定電位電解めっき法を用いて金属積層プリカーサや同時めっきによる合金プレカーサを作製し,それを硫化することでCZTS薄膜の作製を試みた。Moコートしたガラス基板上に,定電位めっき法で,Cuめっき,Snめっき,Znめっきを順に行い,Mo/Cu/Sn/Zn積層プレカーサを作製した。金属プレカーサを窒素雰囲気下でプレアニール処理を行った後,再度,窒素雰囲気中で硫黄とともに加熱することで硫化を行い,CZTS薄膜を形成した。また,硫化後,異相の除去をするために,新たに濃塩酸を用いたエッチング処理を試みた。濃塩酸エッチング処理を行うことでSnSなどの異相を取り除きCZTS単層を得ることができた。このようにして得られたCZTS薄膜上へCBD法を用いてCdSを堆積させ,ZnO:Al窓層,Al上部電極を形成し,glass/Mo/CZTS/CdS/ZnO:Al/Al構造の太陽電池セルを作製し,J-V特性を調べた結果,最も変換効率の高いセルにおいて開放電圧606mV,短絡電流密12.1mA/cm^2,変換効率3,55%の特性が得られた。また,作製したCZTS薄膜の禁制帯幅は,量子効率測定による吸収端から約1.46eVと推定された。この結果は,蒸着法による積層プレカーサを用いたものとほぼ同等の結果であり,非真空めっきプロセスによる低コスト化の可能性を示した。
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