2007 Fiscal Year Annual Research Report
人工ナノ構造をもつ高温超伝導体単結晶超薄膜の作製と磁束線物性
Project/Area Number |
19760017
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
大井 修一 National Institute for Materials Science, 超伝導材料センター, 主任研究員 (10354292)
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Keywords | 銅酸化物高温超伝導体 / アンチドット格子 / 磁束量子 / マッチング効果 / 磁束線フロー |
Research Abstract |
高品質高温超伝導体単結晶、主に劈開による薄膜作製が可能なBi_2Sr_2CaCu_2O_<8+d>への人工的な微細孔の導入、およびその磁束線物性評価を行った。試料作成・評価における大きな改善点として、ミリングによる試料表面の過熱防止、ダメージ低減のため、30Kまで冷却可能な試料ホルダーをミリングチャンバー内に組み込み、同時に磁場下での抵抗測定が可能となるように自作した装置を用いることで、大気中の水蒸気などによる試料劣化などの影響を受けることなく、物性測定を行うことが可能となった。 具体的には、超薄膜試料作製に向けて、電気抵抗をモニターしながらイオンミリングを行うことで、膜厚の制御を行うことを意図して実験を行ったところ、膜厚よりむしろ面内方向の試料幅がミリングによって顕著に減少するという興味深い現象を見出した。このことを利用して、微細孔格子の孔径をミリングによって徐々に広げ、孔径と磁束状態の関係を調べた。結果として、孔径が大きくなるにつれて磁気抵抗振動が広い磁場範囲にわたり明瞭になり、孔径と磁場侵入長が同程度になる時に最も顕著であったことから、磁場侵入長という長さのスケールがこの現象に重要であることが分かった。 また、様々な微細構造パターンとして、これまでに引き続き、FIBを用いて2次元格子パターン、ペンローズパターン(準結晶)・単一リング、ストリップラインなどのナノ構造を試料中に作成し、それらが磁束状態に与える影響を調べた。ペンローズパターンでは、明瞭なマッチング効果を観測でき、理論から予想されていたマッチング磁場との対応もよく、マルチボルテックス状態で人工孔にトラップされていることを示唆する結果を得た。単一リングの場合は、リング幅が狭くなるにつれて磁気抵抗に振動成分が現れた。これは従来超伝導体において観測されているLittle-Parks振動が高温超伝導体で初めて測定された可能性が高く、今後検証実験をすすめる予定である。
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Research Products
(4 results)