2008 Fiscal Year Annual Research Report
溶液中の大質量陰イオンの負イオンビーム化と二次イオン質量分析(SIMS)への展開
Project/Area Number |
19760029
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
藤原 幸雄 National Institute of Advanced Industrial Science and Technology, 計測フロンティア研究部門, 研究員 (60415742)
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Keywords | 大質量陰イオン / 負イオンビーム / 二次イオン質量分析 / SIMS / クラスター |
Research Abstract |
近年、クラスターイオンを二次イオン質量分析(Secondary Ion Mass Spectrometry : SIMS)における一次イオンビームとして用いることで、高精度かつ高感度なSIMS分析が可能となることがわかり、Au^+_3(分子量591u)やC^+_60(分子量720u)などを用いたCluster SIMSに大きな関心が集まっている。既に我々も、より分子量が大きい金属クラスター錯体Ir_4(CO)_12(分子量1104.9u)をSIMS分析に用い、その有用性の実証に成功している。一方、クラスターイオンビームの特徴を一層顕在化させるためには、より原子数が多く、より大きいクラスターイオンを利用することが望ましい。 そこで本研究では、大質量の陰イオンを含有する電解液をエレクトロスプレー(Electrospray)する手法を用いた新方式の溶液型クラスターイオンビーム源の研究開発を進めた。本年度は、溶媒としてエタノール、溶質としてはイオン液体を用いた実験を実施した。イオン液体は、多原子の陽イオンと陰イオンから構成される化合物であり、エタノールに溶解させることで陽イオンと陰イオンに電離した状態となる。実験では、エタノールにイオン液体を溶かした溶液を金属キャピラリーに導入し、高電圧を印加することで陰イオンを放出させた後で真空中に導き、イオンビーム化することに成功した。本成果は、第56回米国質量分析学会において発表した。なお、本会議は、米国質量分析学会(ASMS)の主催により毎年開催されるもので、北米はもとより、南米、欧州、アジアからも多くの参加者があり(約6600人)、実質的には質量分析に関する最も大きな国際学会である。
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