2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19760052
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山口 義幸 Kyoto University, 情報学研究科, 助教 (40314257)
|
Keywords | 長距離相互作用 / 準定常状態 / 非平衡統計力学 / 相転移 / Lynden-Bell統計 |
Research Abstract |
多自由度ハミルトン力学系は、初期条件の如何にかかわらず、長時間の経過によって熱平衡と呼ばれる状態に緩和する。そして熱平衡状態は、Boltzmann-Gibbsエントロピーを最大なさしめる分布として記述することができる。そのため、熱平衡状態に対する統計力学は完成した分野と言うことができる。しかしながら、多自由度ハミルトン系が長距離相互作用を持っている場合は、熱平衡状態への緩和の過程で、準定常状態と呼ばれる状態に長時間トラップされることが観測されている。実際、銀河系など多数の星が重力相互作用している系は、熱平衡状態には緩和しきっておらず、準定常状態とみなすことができる。そこで、準定常状態を記述する統計理論が必要となる。本年の研究では、平均場相互作用をもつHamiltonian mean-field(HMF)モデルと呼ばれるモデルに対して、Lynden-Bellによる先駆的な統計理論を応用し、準定常状態における相転移について以下のような知見を得た。 (1)Lynden-Bell理論をN体シミュレーションの結果と比較し、これらがよい一致を示すことを見た。 (2)HMF系は熱平衡状態では2次相転移のみ起こすが、準定常状態では1,2次の相転移を起こす。 (3)2相を分離する臨界曲線を2次元パラメータ空間上に描いたが、準定常状態が初期状態に依存することを反映して、初期状態を表すパラメータが2次元パラメータ空間に含まれる。 以上のように、本研究の成果は、準定常状態に対する統計理論の検証のみではなく、熱平衡状態では見られず準定常状態に特有な新たな現象を発見したという見地からも重要かつ意義深いものである。
|