2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19760052
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山口 義幸 Kyoto University, 情報学研究科, 助教 (40314257)
|
Keywords | 長距離相互作用 / 準定常状態 / 非平衡統計力学 / 相転移 / Lynden-Bell統計 |
Research Abstract |
多自由度ハミルトン系は、長時間経過すると熱平衡状態へと緩和する。しかし長距離相互作用を持っハミルトン系の場合、熱平衡状態へと緩和する前に、準定常状態と呼ばれる状態に長時間トラップされることがある。準定常状態は初期状態の取り方に依存するため、与えられた初期状態に対してどのような準定常状態が実現されるかを予測することが重要となる。報告者と共同研究者は、保存則を取り入れた統計力学によって、準定常状態、特に非平衡状態での相転移をも予測できることを示してきた。しかしLynden-Bellのアイディアに基づくこの統計力学は、waterbagと呼ばれる特殊な初期状態に対して有用であるという制約がある。そのため、本年度は時間発展方程式からオーダーパラメータの時間発展を記述する方法を開発し、これによって準定常状態における相転移を記述することを計画した。具体的には、多自由度Hamiltonian系を1体分布関数で記述し、1体分布が従うVlasov方程式を導出する。さらに、Vlasov方程式をLie-Poisson括弧を用いて再びハミルトン方程式の形式に書き直し化摂動的な方法を用いてオーダーパラメータの時間発展を記述する。Hamiltonian mean-fieldモデルとwaterbag初期状態に対してこの方法を適用したところ、既存のLynden-Bell統計およびN体数値計算の結果と整合する結果を得た。摂動論であるため計算は煩雑となるが、時間発展を直接扱うため初期状態をwaterbagと限定する必要がない。また、Lynden-Bell統計の有用性が低い自己重力系などの系にも適用できる可能性があり、汎用性のある方法であると言える。
|
Research Products
(3 results)