2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19760052
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山口 義幸 京都大学, 情報学研究科, 助教 (40314257)
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Keywords | 長距離相互作用 / ブラソフ方程式 / 空間非一様分布 / 摂動論 / ランダウ減衰 |
Research Abstract |
本研究の対象は、自己重力系やプラズマ系など、2体間の相互作用が長距離におよぶ系である。多数の粒子が運動する様子を、N体の運動方程式ではなく1体分布関数の方程式であるブラソフ方程式によって解析した。特に、安定定常解に与えた摂動がどのような時間発展をするのかを詳細に調べた。安定定常解が空間的に一様な場合には、ランダウによる結果が知られている。これによると、波数と振動数の関係を表す分散関係の根を複素平面で求めることにより振動を伴う指数的な減衰が起こることがわかる。これをランダウ減衰という。しかし、安定定常解が空間的に非一様である場合には、技術的困難もあり形式論を越えた具体的な解析はあまりなく、ランダウ減衰が非一様の場合にも有効な概念であるかどうかが明確ではなかった。一方で、自己重力系で顕著なように、空間非一様解の解析は応用上非常に重要である。その第1歩として、本研究では理論的な取り扱いが行いやすいHamiltonian mean-field (HMF)系を用いることにより、技術的な困難を乗り越えた。具体的には、(a)空間非一様な場合には1体ハミルトニアンから作用・角変数を定める必要があるが、楕円積分を用いてこれを実行したこと、(b)一般には分散関係はサイズ無限の行列の行列式として表わされるが、HMF系ではサイズ2の対角行列で書けることを示したこと、により緩和の予言と数値的検証を可能とした。われわれが得た結果によると、空間非一様な分布の場合にも、空間一様の場合と同様なランダウ減衰が起こることがわかった。ただし、空間一様な場合との差異として、系のエネルギーを増加させて行くと系の時間スケールを決める主たる根の交代が起こることなどを発見した。本研究により、ランダウ減衰という概念が空間非一様な分布に対する摂動のダイナミクスを記述する際にも有効ではあることが示され、今後の応用へ向けた第1歩が記されたと言える。
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Research Products
(6 results)