Research Abstract |
拡張した3体ポテンシャルにより高分子鎖の配置の多様性を表現したモデルを用いて,非晶質材料の塑性変形モードの温度依存性の発現メカニズムを検討するために,周期境界条件の下,異なる温度で引張・圧縮変形解析を行なった.温度の低い条件(100K)では,引張変形に伴い高分子鎖が配向していき,局所的な変形が伝ぱしていく様子が確認できた.これに対して温度高い条件(300K)では,分子鎖の配向は顕著に生じておらず,個々の分子単位で変形が進行していることが確認できた.これらの違いにより,100Kではせん断帯の発生が確認でき,また300Kでは均質に近い変形が確認できた.この傾向は実験で報告されている結果と類似しており,分子レベルの局所的な変形の伝ぱが,試験片レベルのせん断帯形成に関係しているとが理解できる. また,結晶性材料の延性特性を検討するために,小さな粒(粒径5nm)より構成される多結晶体モデルに大きな粒(粒径30nm)を分布させたbimodalモデルを作成し,引張変形解析を行なった.ここでは,大きな粒の配置を変化させることで,分布の影響を検討した.まず,小さい粒のみで構成された解析モデルは,粒内の転位運動が粒界を介して隣接する粒に伝わり,せん断帯の発生により破断してしまうことが確認できた.つぎに,このせん断帯の伝ぱの抵抗として機能すると考えられる大きな粒を配置した場合,大きな粒を配置することで,必ずしも延性は向上せず,大きな粒の配置に影響を受けることを確認した.つまりこのことは,実験で必ずしもbimoda1構造が高延性を示さない一つの要因を示していると考えられる.
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