Research Abstract |
本研究では,種々の格子構造について「第一原理格子不安定解析」を行うことにより,析出強化超合金の界面原子構造設計につながる重要な知見を,電子レベルから精密に評価することを目的とする.これまで,界面転位発生の臨界ミスフィットの評価や第三元素添加による界面安定化など,Ni,Ni_3Alを対象とした第一原理格子不安定解析を実施してきた.一方,第4ならびに第5世代の超合金開発では様々な元素が試行錯誤で添加されていることをふまえ,電子レベルからの界面原子構造設計の指針となるデータベース構築を目指し,周期表に従って種々の元素に対する「格子不安定マップ」を第一原理格子不安定解析により作成する.本年度は,10族元素(Ni,Pd,Pt)ならびに11族元素(Cu,Ag,Au)について[001]方向に引張を与える静力学解析を行い,応力-ひずみ曲線のピーク(静力学解析での理想強度)と,弾性剛性係数の正値性が失われる「格子不安定点」について検討した.応力-ひずみのピークは,いずれの元素もひずみ0.3程度で生じるが,そのピーク応力は12〜35GPaと広く分布し,10族元素のNi,Pd,Ptの方が11族元素のCu,Ag,Auより大きな値を示した.一方,格子不安定となるひずみは,いずれの元素も上述のピークひずみより前に生じ,0.03〜0.17と元素によりばらついた.対応する応力も4〜28GPaと分布するが,横軸に格子不安定となるひずみ,縦軸にその際の応力をとって整理すると全ての元素が同一直線上に乗ることが明らかになった.一般化されたフックの法則とも言うべきこの格子不安定ひずみ一応力直線の傾き,すなわちヤング率は約160GPaであったが,その物理的意味については未だ不明であり,今後さらなる検討を進めていく.
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