2008 Fiscal Year Annual Research Report
成膜後基板焼入れ処理した窒化チタン被覆鋼の疲労強度とトライボロジー特性
Project/Area Number |
19760073
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
田邉 裕貴 The University of Shiga Prefecture, 工学部, 准教授 (00275174)
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Keywords | 窒化チタン薄膜 / 熱処理 / スパッタリング / 耐摩耗性 / 硬さ / 密着強度 |
Research Abstract |
TiN被覆鋼の高機能化手法としての成膜後基板焼入れ処理の有効性や実用性を示すことを目的として, TiN被覆鋼の摩擦摩耗特性と転がり疲労強度に及ぼす成膜後基板焼入れ処理の影響を調べた. 昨年度の研究で, 成膜後基板焼入れ処理による耐摩耗性等の改善効果は, 成膜後基板焼入れ処理の加熱過程において発現することがわかった.そこで, さらなる耐摩耗性向上の可能性を探るために, 加熱温度範囲を460℃〜1060℃に拡大し, TiN被覆鋼の摩擦摩耗特性に及ぼす成膜後加熱の影響を調べた.その結果, TiN薄膜の耐摩耗性は, 成膜後の加熱温度が960℃までは加熱温度とともに向上するが, それ以上の温度では加熱温度に対する低下傾向を示すことがわかった.TiN薄膜の密着強度も同様の傾向を示したことから, TiN被覆鋼の摺動部品としての機能向上を目的とした成膜後加熱の適切な温度は960℃程度であると考えられた.焼入れ温度がこの温度帯の鋼種を基板に採用することにより, 優れたTiN被覆鋼を作製できる可能性が示唆された.次に, 成膜後基板焼入れ処理の実用化の対象の一つとしてスラストベアリングを想定し, TiN被覆鋼の転がり疲労強度に及ぼす成膜後基板焼入れ処理の影響を調べた.試験には, 成膜後に基板の焼入れ焼戻し処理を施した試験片(CQ材), 基板の焼入れ焼戻し後に成膜を行った試験片(QC材), 未被覆の基板を焼入れ焼戻しした試験片(Q材)の3種の試験片を用いた.最大ヘルツ圧が1000〜2000MPa程度では, QC材が最も長寿命で, 続いてQ材, CQ材の順であった.すなわち, この応力レベルでの成膜後基板焼入れ処理による転がり疲労寿命の改善効果は認められなかった.しかし, 応力の低下に対する寿命延長の程度は, CQ材で最も大きく, 応力の小さな条件下では, 成膜後基板焼入れ処理による寿命の改善効果が得られる可能性があることがわかった.
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