Research Abstract |
本研究では, 弾性域の応力負荷においても発光を示す応力発光材料を用いて, き裂の検出および応力拡大係数の直接評価を行う手法を開発することを目的とする. まず, 市販の応力発光材料粉末(欠陥制御型ユーロピュウム賦活アルミン酸ストロンチウム)をエポキシ系樹脂材料に混合し, 複合材を作製した. 小型引張り試験装置に光学顕微鏡および高感度CCDカメラを取付けた応力発光現象観察装置を試作し, この装置によって, 片側Vノッチ入試験片に引張り負荷を加えた結果, き裂進展中, き裂先端部近傍において, 発光現象を観察することに成功した. そこで, さらに, 構造材料のき裂評価への応用について検討するため, 樹脂と応力発光材料粉末の複合材を金属材料試験片表面に塗布し, 発光挙動を観察した. 用いた金属材料は, 一般構造用鋼であり, 板材を引張り試験片形状に加工した後, 片側ノッチを導入した. ノッチ長さは, 2種類準備した. なお, 同材料のき裂伝ぱ挙動は, き裂伝ぱ試験により求めた. 硬化後の硬さが異なる2種類のエポキシ系樹脂を準備し, それぞれに応力発光材料粉末を混合し, 試験片表面に塗布し, 樹脂の硬化後, 繰返し荷重を負荷しながらノッチ先端近傍を観察した. 様々な繰返し速度において, 最終的に, 下限界応力拡大係数と同程度となる負荷応力を加えたが, ノッチ先端における発光現象は観察できなかった. 他方, 試験片表面の複合材に, 局所的な圧縮荷重を直接加えると発光が認められた. したがって, 金属材料母材のき裂評価のためには, 測定対象となる金属材料, 樹脂, 応力発光材料粉末それぞれの間における力の伝達を適切にするため, とくに, 樹脂材料の選定が重要と考えられる.
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