Research Abstract |
固体表面に微細なテクスチャを作製することで,表面の摩擦係数が減少することが知られている。この原理を切削工具に適用することで,工具・被削材間の摩擦係数が低下し,切削抵抗や工具摩耗などを改善することが可能であると考える。本研究は,工具表面にマイクロ・ナノメータオーダの微細なテクスチャを作製し,そこで発現する摩擦係数の低下現象を応用することで,優れた加工性を持った切削工具を開発することを目的としている。工具表面に微細なテクスチャを作製する手法として,フェムト秒レーザを利用した。これによって,幅,深さが数100nm〜10μmオーダのテクスチャの作製が可能であった。作製した工具の加工性を明らかにするため,アルミニウム合金の旋削加工実験を行った。その結果,テクスチャを作製することで,工具すくい面の摩擦力が減少し,切削抵抗が小さくなることを明らかにした。また,その効果はテクスチャの方向によって異なり,テクスチャの方向が切りくずの排出方向に対して垂直の場合に,切削抵抗は小さくなる。一方,テクスチャの方向が切りくずの排出方向に対して平行な場合,被削材の溶着が生じやすく,その効果は現れない。また,テクスチャによる効果は加工条件によっても変化し,切削速度が大きな場合に被削材の溶着が少なく,その効果が現れやすくなる。さらに,DLCコーティングを行った工具に適用した場合でも,その効果が現れる。以上の結果より,本工具の基礎的な特性を明らかにすることができた。
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