2009 Fiscal Year Annual Research Report
鼻・副鼻腔内における薬液エアロゾルの輸送ダイナミクスの研究
Project/Area Number |
19760114
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Research Institution | Kobe City College of Technology |
Principal Investigator |
山本 高久 Kobe City College of Technology, 機械工学科, 准教授 (10345960)
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Keywords | 数値流体解析 / 鼻腔内熱物質輸送解析 / 二相流解析 / 医用画像処理 |
Research Abstract |
本研究では,鼻中隔彎曲症,肥厚性鼻炎,下鼻甲介腫脹,慢性副鼻腔炎などを患う症例について,その症例のCTデータから鼻腔3次元幾何形状モデルを作成し,鼻腔内の物質輸送現象の数値流体力学解析を行い,これら疾患が鼻腔内の薬液エアロゾル輸送現象に及ぼす影響を明らかにした.鼻腔3次元幾何形状モデルの作成にはマーチングキューブズ法をもちい,そのモデルのスムージングには移動平均法を適用した。数値流体力学解析においては,乱流モデルには低レイノルズ数型k-eモデルを,分散相の解析にはラグランジェ法およびone-way法(分散相が連続相に及ぼす影響は無視できるほど小さいと仮定)を用いた。その結果,各症例における鼻腔内薬液エアロゾルの輸送特性が定量的に明らかになった.流入角度を低く設定すると,エアロゾル流の主流は鼻中隔の湾曲や肥厚などの影響が顕著に表れる上鼻甲介から,比較的鼻腔断面が広い下鼻甲介に遷移することが確認された。また,薬液エアロゾル粒子が小さい場合,より広範囲の鼻腔壁に薬液エアロゾル粒子が沈着することが確認された。特筆すべき結果としては,流入角度をより低く(60゜以下),薬液エアロゾル粒子径をより小さく(粒子径60ミクロン以下)に設定することにより,鼻腔内に大きな循環流が形成される事が明らかになった。本循環流は薬液エアロゾルの鼻腔内滞在時間を延ばすことに貢献するとともに,より多くの粒子が鼻腔壁に沈着することとなる。このような循環流はいずれの症例においても発生することが確認されており,治療効果の向上に貢献しうるデータであると考えられる。
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