2008 Fiscal Year Annual Research Report
多孔質を利用した気体の熱駆動型輸送-圧縮装置の気体論に基づく理論的性能評価
Project/Area Number |
19760118
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
田口 智清 Kobe University, 自然科学系先端融合研究環重点研究部, 助教 (90448168)
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Keywords | 希薄気体 / 多孔質 / 希薄化効果 / すべり流 / 均質化法 |
Research Abstract |
孔径が平均自由行程程度である微細細孔を持つ多孔質を気体で満たし, これに温度勾配を与えると熱遷移効果により気体が輸送される. これは既知の事実であるが, 本研究ではこの熱による気体輸送効果を効果的に用いた気体の(熱駆動型)輸送圧縮装置を考える. その利点としては, (i) 運動部分を全く持たないため耐久性に優れ, (ii) 熱源として低次元のエネルギーを用いることができるため省エネ性に優れる等があり, 低環境負荷の非機械的流体装置として期待されている. 本研究の目的は, この装置の性能を世界に先駆けて理論的に評価することである. そのために, 分子気体力学に基づく系統的解析により, 正方配列円柱群からなるモデル多孔質内の希薄気体流の大域的圧力分布, 多孔質の温度分布, そして多孔質内を流れる気体の流量を計算できる拡散タイプの巨視的モデルを導出した. 本モデルの利点は, 既存モデルと異なり, モデルに含まれる拡散係数を, ボルツマン方程式の所定の境界値問題を解くことにより, 理論的に構築できる点にある. そこでボルツマン方程式のBGKモデルに基づく精密な数値解析を行い, 拡散係数を希薄度および円柱半径の関数として数値的に構築することに成功した. これらの成果は, 流体力学の分野における一流誌Physics of Fluidsに掲載されるとともに, 拡散係数に対する数値解析の結果は世界初の結果として当該分野で最も権威のある国際会議 Rarefied Gas Dynamicsにおいて発表済みである. 次に, 本輸送装置は異なる多孔質を交互に連結した構造を持っているため, 拡散モデルを用いて装置の性能評価を行う際には, 多孔質の接合部における接合条件が必要になる. そこで, 円柱半径の異なる二つの正方配列円柱群を連結した状況を考え, 拡散モデルに対する接合条件を理論的に導出することに世界に先駆けて成功した.
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