Research Abstract |
自由界面, 及び固体界面を介する熱・物質輸送現象の理解と予測は, 工学, 及び地球環境科学の分野において, 基礎的、且つ重要な問題である.本プロジェクトでは, 高シュミット数における界面近傍のミクロな濃度境界内部の輸送現象から, 界面遠方のマクロな乱流運動に至る階層的な輸送過程を解明し, 物理現象に基づくモデリングを行うことを最終目的としている.本年度は, 以下の成果が得られた. 1.固体壁面における乱流物質輸送機構の解明 壁面近傍における濃度場のダイナミクスを一次元移流拡散方程式によってモデル化し, 速度変動と濃度変動を関連付ける伝達関数を解析的に求め, 高シュミット数では低周波数成分の濃度変化が支配的となることを理論的に示した.(Int.J.Heat and Fluid Flow, in press). 2.高レイノルズ数における階層的輸送機構の解明 従来低いレイノルズ数(Re_tau=150)で行われていた高シュミット数物質輸送計算を更に高いレイノルズ数域(Re_tau=300, 450)に拡張した.その結果, 低レイノルズ数域で確認されていた運動量輸送と物質輸送の非相似性が高レイノルズ数域においても, より顕著に現れることが示され, 現実の流れにおいても, 壁面近傍の輸送機構を考慮したモデル化の必要性を示した.(第22回数値流体力学シンポ) 2.変形界面近傍における物質輸送機構 昨年度開発された界面適合格子を用いた計算コードを用いて, 界面変形を伴う自由表面乱流, 及びそれに伴う物質輸送の数値計算を行った.界面波と乱流の効果を分離することにより, 両者の界面物質輸送に対する寄与を定量的に見積もった.その結果, 界面波は乱流と同等の寄与があることが明らかとなり, 一方乱流の寄与分についても, 変形の影響を大きく受けることを示した.(ICTAM, 2008).
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