Research Abstract |
自由界面,及び固体界面を介する熱・物質輸送現象の理解と予測は,工学,及び地球環境科学の分野において,基礎的、且つ重要な問題である.本プロジェクトでは,高シュミット数における界面近傍のミクロな濃度境界内部の輸送現象から,界面遠方のマクロな乱流運動に至る階層的な輸送過程を解明し,物理現象に基づくモデリングを行うことを最終目的としている.本年度は,本プロジェクトの最終年度にあたり,これまでの研究成果のまとめを行った. 1. 固体壁面における乱流物質輸送機構の解明 壁面近傍における濃度場のダイナミクスを一次元移流拡散方程式によってモデル化し,速度変動と濃度変動を関連付ける伝達関数を解析的に求め,高シュミット数では低周波数成分の濃度変化が支配的となることを理論的に示した.(Int.J.Heat and Fluid Flow, 2009).また,上述の一次元移流拡散方程式を更に解析することによって,壁近傍の渦拡散係数と壁鉛直方向速度変動を関連付けるモデル式を提案し,直接数値シミュレーションの結果と良い一致を確認した.これにより,従来のモデルに対して,より普遍的なモデルの導出が可能となった.今後は,より広い流動条件において,上述のモデルの検証を続ける予定である. 2. 自由界面,汚れ界面,固体界面における高シュミット数物質輸送現象の統一的な理解とそのモデル化 昨年度までに,清浄な気液界面に界面活性物質が吸着することによって,界面物質輸送が阻害され,最終的には,物質輸送係数が固体壁面の値に収束することを示してきた.また,上述の物質輸送機構の変化は,界面垂直方向速度変動の界面漸近挙動に着目することで,説明できることを示した.本年度は,界面弾性が界面垂直方向速度変動に与える影響を解析的に求めるモデルを構築し,バルクの流体運動が界面近傍の流れ場に及ぼす影響を明らかにした.更にその情報を一次元移流拡散方程式に基づく物質輸送モデルに組み込むことにより,清浄な気液界面から,汚れ界面,固体壁面までの銃一的な予測を可能とするモデル構築を行った(Proc.THMT2009).
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