2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19760139
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
千足 昇平 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 助教 (50434022)
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Keywords | 単層カーボンナノチューブ / 光物性 / 近赤外蛍光分光法 / 環境効果 |
Research Abstract |
単層カーボンナノチューブ(single-walled carbon nanotube, SWNT)は1枚のグラファイトのシート(グラフェン)を筒状に巻いた擬1次元構造物質であるが,その電子構造はその巻き方(カイラリティ)によって変化することが知られている.一般的な合成手法では様々なカイラリティが同時に生成されてしまうため,SWNT応用においてはカイラリティによる分離精製法や,合成時のカイラリティ制御技術が重要になる.現在のところ分離精製時には溶液中に超音波による分散過程が必要不可欠だがその際のダメージが危惧されてしまうため,合成時のカイラリティ制御手法はSWNT応用に向け必要不可欠である.このカイラリティを分析する手法の1つが近赤外成功分光法(photoluminescence, PL)であり,本研究課題ではこのPL測定法を用いた,合成プロセスにおけるその場観察を行い,成長段階にあるSWNTのカイラリティ決定メカニズムに関する知見を得ることを目的としている.そのSWNTの電子構造は温度,圧力や周辺環境によって変化し,それに伴いSWNTの光物性も周辺環境に影響を受ける.成長段階にあるSWNTを分析するためには,この環境効果を理解することが非常に重要であり,ガス雰囲気における環境効果についての測定・分析を行ってきた. SWNTの合成時には,CVDガスが熱分解され様々な分子が生成される.水素は非常に重要な分解生成物の1つであり,SWNTと水素ガスの相互作用についてPL分光法を用いて分析を行った.水素分子が,高エネルギーによって分解され原子状水素となった場合,容易にSWNT表面に吸着する.吸着した水素原子はSWNTの電子状態に大きな影響を与えるため,PLスペクトルも大きく変化することが明らかとなった.これらの結果より,合成時におけるSWNTの表面状態をPL分光法によって更に詳細な分析が可能となった.
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