Research Abstract |
単層カーボンナノチューブ(single-walledcarbon nanotube, SWNT)とは1枚のグラファイトのシートを筒状に丸めた構造をし,直径1~2nm,長さ数mという非常に高いアスペクト比を持つ炭素原子のみから構成される物質である.現在,SWNTの構造(直径,長さ,カイラリティ,位置,方向など)の高度な制御が必要となるものが多いが,現在の生成技術では様々な構造や形態のSWNTが生成されてしまい,また生成後にそれらを分離・精製することも現時点では非常に難しい.その為,未だ明らかになっていないSWNTの生成メカニズムを理解し,高度な構造制御を伴う生成方法を確立することが非常に重要である. これまでSWNTの直径や長さ,成長方向などはその生成条件によってある程度制御可能になってきているが,現在カイラリティの制御法は全く見出されていない.カイラリティはSWNTの光学物性や電気伝導特性と言った特に応用に期待される物性を決定する非常に重要なパラメーターであり,そのカイラリティを測定する方法が近赤外蛍光分光法である.近赤外蛍光発光はSWNTの電子構造に起因し,現在最も注目を集めているSWNT分析手法の1つであるが,未だSWNTの近赤外蛍光スペクトルの解釈には議論の余地が多く,また蛍光測定によるその場成長観察は行われていない.成長中におけるSWNTのその場近赤外蛍光測定を行えば,そのカイラリティ形成過程や新たなSWNT生成メカニズムに関する知見を得ることができると考えられる. 以上を踏まえ,本研究では近赤外蛍光分光法を用いたSWNT成長メカニズムの解明を目的として研究を行う.近赤外蛍光分光測定装置内においてCVD法によるSWNT合成及びその場蛍光測定を行い,その成長の様子を分析し成長メカニズムを解明していく.また同時に,SWNT成長のその場蛍光分光スペクトルの分析に必要な,SWNT蛍光スペクトルの環境依存性を明らかにする.
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