2009 Fiscal Year Annual Research Report
自然対流及び強制対流中における臨界点近傍ヘリウムの流体力学的不安定性の解明
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19760144
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
岡村 崇弘 High Energy Accelerator Research Organization, 素粒子原子核研究所, 助教 (90415042)
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Keywords | 熱伝達特性 / 直接数値計算 / 渦構造 / 乱流遷移 / 臨界点近傍 / 乱流制御 / 線形安定性解析 / 不安定性 |
Research Abstract |
臨界点近傍の流体は2つの特異な現象を有する。1つはピストン効果、2つ目はサーマルプルームである。両者の出現の有無は体系に強く依存する。後者は通常流体でも生じることがあるが、臨界点近傍のヘリウムは熱拡散係数が非常に小さい(IE-9m^2/secのオーダー)であるために、わずかな温度差でもプルームもしくはそれに相当する温度場を形成する。すなわち微小擾乱に対しても不安定になり流れ場は乱流状態となる。 本研究では臨界点近傍ヘリウムの上述の性質を考慮して、臨界点近傍のヘリウムにおける強制対流・鉛直平板自然対流の熱伝達特性及び乱流遷移過程の流路形状依存性及び熱力学的体系依存性を調べた。流路形状に関してはチャネル中にリブレット、絞り、格子が存在する系を調べた。また熱力学的体系とは着目系の全質量が保存されない開いた系、及び全質量が保存される閉じた系を意味する。このように2種類の熱力学的体系を考察する理由は上述のピストン効果の存在に起因している。乱流遷移過程に関しては、局所熱伝達係数の空間変化に着目するとともに直接数値計算を行い流れ場に形成される渦管の時間空間発展を捕らえた。渦管は速度勾配テンソル第2不変量から求めた。構造物が存在する場合、多くは構造物前縁部がトリッピングワイヤー効果をもたらすため熱伝達が向上する。また渦構造を調べることで、対流発生の早い段階から乱流熱伝達特性を示すような構造物配置法を見出した。また自然対流系において、開いた系では通常の熱伝達特性と比較的良い一致を示すが、閉じた系においては発熱面以外の壁面(断熱でなく初期流体温度に保持される壁面)に下向き対流が生じ流れ場はより複雑となる。また、開いた系における変動成分の線形安定性解析をOrr-Sommerfeld方程式を用いて行った。ピストン効果の影響を考慮した線形安定性解析は今後の課題である。これは下向き対流発生条件を定量的に明らかにするために必要不可欠と考えている。強制対流系においても発熱体の設置方向で温度境界層が大きく揺らぐ場合が存在し、この揺らぎの原因を定性的に明らかにした。
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