Research Abstract |
まず, 機械的振動を入力した場合の細胞の応答を検証するために, 十分な剛性を有する培養プレートに骨芽細胞を播種し, これを加振器に取り付け, 培養面に対して垂直方向に正弦波加振することで細胞に慣性力による機械的振動を与えながら細胞培養を行った. 細胞増殖に関しては, 振幅0.5Gで一定とし, 振動数12.5〜1000Hzとして実験を行った結果, 振動数が低いほど細胞増殖が亢進され, 12.5Hzでは非振動群の約2倍となることを示した. また, 振動数を25Hzで一定とし, 振幅を0.125〜0.5Gとして実験を行った結果, 振幅が大きいほど細胞増殖が亢進されることを示した. この実験は当該年度および前年度で複数回行われ, 実験の再現性を確認した. 骨形成能の指標であるオステオカルシンの遺伝子発現に関しては, 振幅0.5Gで一定とし, 振動数12.5〜1000Hzとして実験を行った結果, 50Hzに極大値が存在することを示した. また, 振動数を50Hzで一定とし, 振幅を0.125〜0.5Gとして実験を行った結果, 振幅が大きいほど骨形成が亢進されることを示した. この結果は, 骨形成能の指標としてアルカリフォスファターゼ活性を用いた前年度の結果と一致し, 骨形成に対する振動数・加速度振幅の依存性が多面的に示されたことになる. 次に, 細胞の動的モデル構築のために, 細胞浮遊液の比重を変えて細胞の浮沈を検証することで, 細胞の質量を算出した. その結果と, 前年度得られた細胞の粘弾性とを用いて, 細胞全体を1自由度振動系としてモデル化した. その結果, 細胞では粘性が非常に大きいため, 細胞全体としては過減衰となることが推察された. よって, 細胞増殖や骨形成の振動数依存性は, 細胞全体の振動特性ではなく, 細胞の局所的な振動特性に基づく可能性があることを示した.
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