Research Abstract |
近年,急速に高度・専門分化してきた医療診断・治療技能に対して,個々の専門技術に対応できる医師の数は限られる.このような医療分野の特殊事情から,医療技能・技術の維持・強化が困難になってきている.この問題を克服するために,医療技術の技術化が今後ますます必要になる. 具体的に,暗黙知としての専門技能を技術として明らかなものとし(形式知),これを機能として医療支援システム上に実装することで,医療技術の共有・再利用・改良が可能になり,専門医のように人体に対して安全に接触動作する医療診断・手術支援システムが実現するものと期待されている. 本研究では医療診断・手術技能の技術化に関する研究を行なう.本研究で提案する医療診断・手術技能の技術科とは,医療診断・手術jにおける手技・スキルを機能として抽出・構造化し,これを定量的に解析し,さらに関数として医療ロボットの制御・機構上に実装することで,医療支援システムの開発に利用しようとするものである. 本研究課題は,技能の高度化あるいは専門分化の進展が特に顕著な超音波医療診断・治療技能を取り上げ,これらの技能を技術化する方法の確立を目的とした.具体的には,暗黙知としての専門技能を技術として明らかなものとし(形式知),これを機能として医療支援システム上に実装した後,その有効性を検証することを目的とした. 本研究で得られた成果は下記の3点に集約される. (i)超音波医療診断・治療システムの要求機能を明らかにして,システムの設計指針を導き,提案した。そのなかで,診断中のプローブ操作タスク,診断画像を適正化するために必要なプローブの押しつけ力・推しつけ姿勢を明らかにした。これにより,医師の診断の専門技能を技術として扱うことが可能になる. (ii)提案した設計指針に基づいて医療診断・治療システムを構築した。その特徴は,ロボット先端部と患部の間の安定的な接触を実現するための制御手法,患者にとって安全・安心な動作を実現する機構および制御アルゴリズム,診断モードに応じて好適な動作を実現する制御系の動的切り替え手法にある. (iii)構築した超音波医療診断・治療システムを用いた動物実験および臨床実験を通してシステムの有効性を実証した。
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