Research Abstract |
イオン導電性高分子アクチュエータの分布系モデリングという新しい観点から,モデル化を行ってきた.本年度はまず電気系の分布RC回路モデルについて,ある理想的な条件において,離散近似モデルの極限が連続系モデルに一致することを示した.これは,解析が困難な分布系モデルを離散近似する際のよい方法を与え,今後シミュレーションや設計への展望が開けた.なお,これまで考慮してきたモデルは線形性を仮定したものであった.しかしながら実験では,屈曲の大きさは電圧の大きさに比例せず,2次から3次に近い非線形性をもつ.実はこのことはあまりよく知られていない.そこで,その特性を明らかにするため,非線形特性の調査を行った.非線形特性の計測において,正弦波入力に対する出力の基本周波数成分を取り出し,振幅比をみるという手法を提案した.この手法を用いてあるIPMC試験片について非線形性を計測したところ,電圧から屈曲までの非線形性が大きいのに対して電流から屈曲までの非線形性は小さく,また,電圧から電流までの非線形性は大きかった.そのため,非線形特性はアドミタンスにおいて大きく,電気機械変換特性は線形特性をもつと近似できるという仮説を導くことができた.この結果は,今後の動作原理の解明へ役立つ可能性がある.ところで,生物の骨格筋は筋活動度が高くなるにつれ機械的インピーダンスが大きくなることが知られており,アクチュエータを力制御する際にも同様の特性を持たせられると望ましい.そのため,これまでに導出されたモデルを近似したものを利用し,IPMCの力制御への応用を行った.とくにPID制御器を用いた場合,提案するモデルを用いると,極配置を用いて容易かつロバストな制御系を設計できることを実験から確認できた.今後,アクチュエータの柔軟性を活かして位置制御や力制御の設計に応用することが期待される.
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