Research Abstract |
本年度は,研究計画に基づいて研究を行い,以下のような結果を得た. 1.実験装置全体の改良および補修 実際の磁気ディスクの潤滑剤として使用されている2nm以下の膜における測定を実現するために,測定精度の向上を目指して実験装置の改良を行った.具体的には,旧機種よりも高速,高精細,軽量の超高速ビデオカメラを本格導入し,画像の高解像度化,装置の高剛性化を実現した.また,カンディレバーの変位検出に使用している反射面をアルミ蒸着ガラス鏡に変更した.従来のシリコン研磨面と比較して表面精度が約2倍向上し,反射光のコントラストも約43%向上した.これらの改良により,干渉縞の同定精度の標準偏差が21.4nmから14. 7nmに改善された.一方,実験データの処理,保存に使用していた装置が動作不良を起こしたため,計画段階では想定していなかった処理装置を新規に導入した. 2.垂直方向の分離実験 改修した実験装置を使用して, 2nm程度の極性潤滑剤(PFPE Zdol2000, Zdo14000)および無極性潤滑剤(Z03, Z25)の垂直方向の伸び量と凝着力を測定した.実験結果から,無極性潤滑剤では,分子量の大小は伸び量に影響しないこと,極性潤滑剤では分子量が大きいと伸び量が小さいことを確認した.これらの結果は,分子量の大きさの直接的な影響というよりも,流動分子の多寡が主要因であると考えられる.凝着力については,極性潤滑剤の方が無極性潤滑剤よりも小さく,極性潤滑剤ではZdo12000の方が小さいことを確認した.これは,Zdo12000の分子直径に近い約2nmの超薄膜では,単分子膜が整然と形成された状態となり,表面エネルギーの小さい主鎖が表面に露出するために,凝着力が最小になったと考えられる.このような層構造を持たない無極性潤滑剤の場合には,分子量による顕著な差がなく凝着力がほぼ一定であることも確認した.
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