2007 Fiscal Year Annual Research Report
有機Mott絶縁体結晶を用いた金属絶縁体転移型デバイスの研究
Project/Area Number |
19760211
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
酒井 正俊 Chiba University, 大学院・工学研究科, 助教 (60332219)
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Keywords | モット絶縁体 / 電界効果トランジスタ / 電荷移動錯体 / 電界誘起相転移 / モット転移 / 有機デバイス / 有機トランジスタ / 両極性 |
Research Abstract |
有機Mott絶縁体である(BEDT-TTF)(TCNQ)電荷移動錯体の結晶をSiO_2/Si基板上に成長させ、ゲート電界の印加によって誘起される相転移について研究した。(BEDT-TTF)(TCNQ)は両極性の電界効果トランジスタ特性を示し、電子・正孔ともに注入が可能であることを示した。電子移動度の温度依存性において、280K以上で急激に移動度が上昇する現象を世界で初めて明らかにした。同じ温度領域において正孔移動度には有意な変化は認められなかったため、電子移動度の急激な増加は従来的な構造相転移に起因するものではないと考えられる。この新規現象について、注入キャリアのMott転移を考慮した考察を行った。また、TCNQの一部をより電子親和力の高いF-TCNQに置き換えた結晶(BEDT-TTF)(TCNQ)_<1-x>(F-TCNQ)_xを成長させ、同じく両極性電界効果特性を観測した。導電率や移動度のx依存性から、F-TCNQは正孔ドーパントおよび電子トラップとして働くことを明らかにした。さらに、正孔ドープした結晶の電界効果特性において、注入電子のみならず、注入正孔によるMott転移も観測された。これらの現象は有機デバイス分野の研究ではこれまで報告されたことがない。この新規性が評価され、物性物理学分野で名高いPhysical Review B誌に論文が掲載された。付け加えて、現象が室温に近い温度域で起こることから、基礎研究的な興味だけでなく、実用デバイスとしての応用研究もおおいに見込まれる。
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Research Products
(15 results)