2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19760218
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
小島 磨 Kobe University, 工学研究科, 助教 (00415845)
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Keywords | 閉じ込め励起子 / 非線形光学応答 / 超高速応答 / 半導体薄膜 |
Research Abstract |
半導体薄膜中に閉じ込められた励起子の光学非線形性に基づいた超高速光デバイスを実現するために、励起光パルスを制御することで、励起子の光学非線形効果と応答速度を制御することを目的とした。特に、膜厚100nm程度の薄膜内に閉じ込められた励起子が示す大きな非線形光学応答に注目した。平成20年度の成果は以下の通りである。1. 縮退四光波混合(DFWM)測定を行う2本のビームに、さらに1本のパルス列を追加して励起子密度を変えて測定を行った。このパルス列の偏光を他の2本と直交させることにより、過渡応答信号の波形に影響を与えずに、励起子の密度だけを変えることが可能となった。この実験の結果、励起子密度の増加とともに、信号強度が低下するが、パルス幅程度の超高速応答は変化しないことが明らかになった。したがって、前年度に見出した超高速応答が超高速光スイッチへ展開することが可能であると考えられる。2. 信号強度の低下を抑制する手法を見出すために、DFWM測定における2本のパルス光強度を様々に変えて測定を行った。その結果、パルス光強度の変化により、信号強度が大きく変化した。この変化の起源は、励起子ラビ振動によるものであると考えられ、さらに量子ドットなどで報告されるよりも50倍程度大きい励起子双極子モーメントを本試料が有していることが明らかになった。3. ポンプープローブ信号に現れるパルス幅よりもはるかに遅い信号立ち上がりが励起子ポラリトンの伝播に起因するものであり、約40K程度でその効果が消失することを明らかにした。この伝播効果は励起子の時間発展を反映しているものと考えられ、励起子の空間的なコヒーレンスに依存している。 以上の結果は、光パルスにより励起子状態を制御できる可能性を示すものであり、光スイッチへの展開に大きな貢献を与えると考えている。
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