Research Abstract |
本研究の目的は,申請者等の開発したフィルタバンクにおける最適信号近似に関する成果を,変数係数の非斉次線型偏微分方程式の離散的な近似解法に応用して,所与の離散点で所与の非斉次線型偏微分方程式と初期条件とを同時に満たすことが保証された数値解法を確立すると共に,本数値解法を並列に計算するプログラムの実現法を明らかにすることである。平成19年度は,次年度以降に行う研究の基礎となる理論を構築するため,1変数の非斉次線型偏微分方程式を対象とする数値解法を研究した。 まず,時間制限された信号を対象とする最適信号近似の理論を構築した。加えて,この理論のなかで用いられる拡張された1次元フィルタバンクが,1変数の非斉次線型偏微分方程式をモデル化することを示したと共に,このフィルタバンクの設計理論を構築した。さらに,上記設計理論に基づいて設計されたフィルタバンクの合成フィルタに,所与の非斉次線型偏微分方程式の右辺にあたる既知の入力関数と,初期条件を与える既知関数の標本値を入力することによって,未知の厳密解の近似が,当該フィルタバンクの出力信号として得られること,及び,出力信号として得られた近似解が,所与の標本点の全てにおいて,所与の非斉次線型偏微分方程式と初期条件とを同時に満たすことを理論的に示した。加えて,これらの理論に基づいた1変数の非斉次線型偏微分方程式の数値解法を構築し,この数値解法に基づく数値計算を並列計算機上で実行するプログラムのプロトタイプを試作した。 さらに,非斉次線型偏微分方程式の係数が定数である場合の数値解法の高速化に応用可能な,拡張されたフィルタバンクの高速設計法を示したと共に,連立非斉次線型偏微分方程式の数値解法への応用が期待できる,ベクトル信号を対象としたフィルタバンクを用いる最適信号近似の理論を構築した。 また,これら研究成果を,国外,及び,国内で開催された学会で発表した。
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