Research Abstract |
本年度は,昨年度正弦波に近いカオス時系列データの予測に成功したファン・デル・ポール発振器をインダクタで格子状に結合した回路を用い,より複雑で,より自然現象に近いと考えられるダブルスクロールアトラクタを持つカオス時系列データの合成と予測を行い成功した。また,ハード化を考慮した実験として,回路方程式を正規化して用いるのではなく, そのままspiceでシミュレートし, 正弦波に近いカオス時系列データの予測を行ない成功した。spiceを用いる際は, 全部で65のパラメータと9の初期値を調整する必要があるが, これを手動ではあるが比較的効率良く操作できる手法についても開発を行なった。この成功により, 複雑な波形でなければ, 本システムであっても実際の回路による予測が可能である可能性がより一層高くなったと考えられる。本手法では, 問題点が未だ数多くある。特に昨年度は, 厳密な計算ではなく人間の目視により誤差を考慮していた。本年度は, 正規化した式を利用する手法において, 自動的に合成データを時間で区切って重みをかけて誤差を求めるなど, ある程度自動的に最適解を求めるシステムへの改良を行なった。この結果, 手動である部分が多く, 人間のみに比べ予測精度もわずかに落ちるが, 現在の手法であっても, 1パラメータ程度であれば自動化が可能であると考えられる。さらに, これらの手法で用いる回路において発生する現象の解析を進め, 規模を大きくした同様の回路において, 特殊な現象が発生することを明らかにした。特に, 定常状態でも位相差の波が存在し続ける特殊な現象を発見した。また, スパイラルインダクタを複数用いた加速度や動き検出, また, 位置検出などが可能な, 動く物体の時系列データを採取することができるシステムの開発を行なった。この手法は相互インダクタンスの変化を用いており, この過程で様々な歪んだ波形が観測されており, 時系列データ合成への転用も考えられる。
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