Research Abstract |
本年度は,日射および降雨がコンクリートの収縮,表面の収縮ひび割れに与える影響について検討を行った.日射,降雨の有無条件を変えた3種類の屋外環境で,各環境作用の影響の抽出を試みた.単位水量を一定とし水セメント比の異なる普通強度,高強度コンクリートで検討し,湿潤養生後それぞれの環境に供試体を暴露し収縮,収縮ひび割れの経時変化を計測した.その結果,コンクリートの収縮は,降雨の影響を強く受け,雨水の内部浸透によって収縮が大きく抑制されることが分かった.収縮に対する雨の影響は降雨量より降雨時間に依存し,雨季には収縮が持続的に抑制された.東京大学で開発中のマルチスケール複合構成モデルの実環境作用下における適用性を検討した結果,変動温湿度下における収縮挙動は温度の単純線形近似,平均湿度の境界条件で概ね追跡が可能であるが,雨天による局所的な収縮回復を再現するには降雨浸透を考慮した境界モデルが必要であることがわかった.また,実務の収縮予測式を用いる場合も,周辺平均湿度から雨水浸透による収縮回復の予測は難しく,降雨の影響を平均湿度に反映させる等の実務的な手法が有効であると思われる.収縮ひび割れについては,降雨が収縮を抑制するため収縮ひび割れも抑制する一方で,日射は表面部分のコンクリートの局所的な乾燥を促進するため,収縮ひび割れを誘発することが分かった.鉄筋コンクリート構造物の耐久性低下をもたらす表面の収縮ひび割れの挙動に,日射,降雨ともに大きく影響を及ぼすことから,境界条件に応じた適切な劣化予測を行う上で,これらの環境作用に留意する必要があることが示された.今後は室内の要素実験などを通じて,降雨時間・量に応じた水分のコンクリートへの浸透量,日射時間・量に応じたコンクリート表面の温度上昇,乾燥促進を定量的に把握し,モデル化することが課題として挙げられる.
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