Research Abstract |
コンクリート床版と鋼箱桁からなる上部構造に対し, 鋼製フィンガー型伸縮装置を考慮した数値解析を実施した. 数値解析の実施にあたり, 伸縮装置のモデル化の違いが, 数値解析結果, 特に, 伸縮装置の変形量や, コンクリート床版に伝達する応力などに与える影響について考察を行った. また, 伸縮装置の変形量から車両の通行できる速度を検討し, 大地震直後における緊急車両の通行可能性について言及した. 下記に得られた結果をまとめる. (1) 鋼製フィンガー型伸縮装置は, フィンガー, リブプレート, フランジ, ウェブで構成されるが, フィンガー部だけを考慮し, 他の部材を無視すると, 鉛直方向の拘束剛性が低下するため, フィンガー部のめくり上がり量が大きくなることが明らかとなった. つまり, コンクリート床版と一体化するリブプレートなどが伸縮装置の鉛直方向変形量に大きな影響を与えるため, 伸縮装置のモデル化にはすべての部材を考慮することが必要であることがわかった. (2) 耐震設計で用いられているレベル2地震動程度の地震を想定した場合, 上部構造の衝突速度は最大で約2.0m/sから2.5m/sとなるため, 衝突速度を1. 0m/sから2.5m/sで解析を実施した. その結果, 衝突速度が2.0m/sを越えると, 伸縮装置の根元部同士の衝突も起きるため, 伸縮装置の変形に伴う床版との段差量が100mmを越え, 最大で165mmという結果を得た. 段差量が150mmを越えると, 軽車両は通行不可能, 乗用車は時速14km以下, 大型トラックも時速32km以下の低速でしか走行できないが, 伸縮装置の変形だけによる段差だけなら, 土嚢などの応急処置で緊急車両の通行は確保できることが明らかとなった. そのため, 支承の破損による上部構造の段差などを防ぐことが車両の通行可能性の維持には重要であることがわかった.
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