Research Abstract |
人工造粒物である造粒石炭灰(クリンカアッシュなど)は, 粒子自信が人工材料であるため, その粒子特性を理解し, 集合体としての材料特性にどのような影響を与えるのかを把握する. 粒子特性として粒子強度や粒子形状に着目し, 粒子特性を踏まえた上でのせん断特性などとの関連について詳細に調査する. また, 造粒物であるため, 粒子自身が多孔質となる. その点についても特徴と捉え, 多孔質性を考慮した高度利用について検討することを目的とする. 本研究では, クリンカアッシュを対象とし, 一連の物理試験及び力学試験に加え, 多孔質性の影響が顕著に現れると思われる不飽和時の特性についても保水性試験などを通して検討し, 飽和・不飽和浸透流解析及び安定解析から有用性について検討した. クリンカアッシュの粒子密度は1.95〜2.24g/cm3と, かなり小さな値を示しており, これは, 粒子の内部にある外部と連結していない閉じた空隙の影響と考えられる. また, 他の自然砂と比較して粒子自体の強度は小さく, 粒子形状が複雑であり, これが, 力学特性に大きく影響しているものと考えられる. 一方で, クリンカアッシュは破砕性材料であるため, そのセカントアングルは, 有効拘束圧が大きくなると低下する. しかし, 最も緩い状態であっても50kPaの有効拘束圧では, 40°以上のセカントアングルを確保でき, 密な状態の場合は, 最大52°程度のセカントアングルを得ることができる. これらの性質を踏まえ, 豪雨によって崩壊した腹付け道路盛土の被災事例に基づき, 崩壊した既設盛土とクリンカアッシュを盛土材料として利用した場合の安定性を比較した. その結果, クリンカアッシュを盛土材料とした場合には, 既設盛土よりも安定性が高いことがわかった. これは, クリンカアッシュは, 盛土内に地下水位が形成されないこと, クリンカアッシュが軽量でせん断強度が大きいためと考えられる.
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