Research Abstract |
本研究においては, 豪雨時の斜面崩壊メカニズムを明らかにすることを目的として, 遠心力場散水実験を実施した. 遠心力場において浸透現象を扱う場合は, 浸透時間に関する相似則を考慮する必要がある. 本研究では, 間隙流体の粘性を調節してこの問題を解消した. 遠心力場散水実験において, 平成20年8月末に東海地方を襲った豪雨を想定し, 時間雨量150mm程度の豪雨を1時間与えた場合の盛土斜面の崩壊機構を調べたところ, 降雨開始から早い段階で表層が崩壊することが分った. また, 時間雨量30mmに設定し, これを5時間与えて総雨量を150mmにしたケースと前述の豪雨を比較したところ, 総雨量が同程度であっても, 豪雨時においては短時間で規模の大きな崩壊に至ることから, 災害規模は降雨強度に依存することを明らかにした. また, 法面勾配30度の盛土斜面において, 時間雨量30mm, 総雨量450mmになるまで降雨を与えたところ, 崩壊土砂は観察されずに, 他のケースのような表層崩壊と比較して深い部分でのせん断変形と盛土全体の沈下が確認された. これは, 雨水が地盤内に浸透していったことに起因するものと考えられる. ここで, 本研究で用いた地盤材料の強度特性を調べるために一面せん断試験を実施したどころ, 乾燥密度ρ_d=1.4g/cm^3においては, 内部摩擦角がφ'=40度であることが分っている. 盛土の法面勾配が土の内部摩擦角以上である場合, 雨水浸透による極めて表層部分での飽和によって見掛けの粘着力が消失すると崩壊が発生することを示唆している. 一方で, 法面勾配が緩く表層崩壊に対する安定性を保持している場合は, 雨水は地盤内に浸透していき, 盛土全体の飽和度を上昇させる. さらに, 土塊重量の増加により不安定化していくと, 大きな円弧に沿ったすべりに対する安定性が低下すると考えられる.
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