2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19760366
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Research Institution | National Research Institute of Police Science |
Principal Investigator |
大賀 涼 National Research Institute of Police Science, 交通科学部, 研究員 (50392262)
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Keywords | 交通事故 / 交通事故解析 / 電動車いす / 頭部傷害値 / 歩行者事故 / 事故再現 / 交通工学 / 自動車工学 |
Research Abstract |
ハンドル型電動車いすの交通事故で最も発生率の高い、出会い頭事故の実車衝突実験を行った。実験では以下の知見を得た。 ・車いすの乗員の高さは頭頂部で140cmとなり、歩行者より低い。 ・時速30kmで走行する車両との衝突ではWAD(路面から頭部の衝突位置までの距離)は140cmであった。つまりボンネット車による実験において、頭部衝突位置はボンネット上であった。車いす乗員の高さが低いことはBLE(車両のボンネット先端)への頭部の接触を引き起こすほどのものではなかった。乗員のボンネット接触時のHIC(頭部傷害値)は100(負傷の危険が低い)であった。 ・車いすの乗員が路上へと投げ出されるときのHICは1000(重大な傷害を負う)であった。 ・車いすは衝突した車両により下方向へ押し込まれる力を受けたが、車底部へ潜り込むことはなかった。この下向きの力により路面には車いすのタイヤ痕が強く印象された。 車いすがアスファルト舗装路面上で転倒する実験を行った。実験では以下の知見を得た。 ・転倒時の乗員の姿勢を変えた転倒実験を比較したところ、HIC100から1100へと変化した。 以上の知見から、電動車いすの乗員の負傷の形態は歩行者に類似しており、その問題点も同様であった。つまり車両との衝突より、路面との接触が負傷の原因として大きい。ただし歩行者事故と違い、車いすに保護機能を付加することで傷害値の低減が期待できる。例えば転倒時の姿勢を良好に保持する機能が有効であると考えられる。 また時速30km程度の低速での衝突では車底部への潜り込みはなかったが、衝突速度が高速になると潜り込みが発生する可能性がある。 事故調査技術の観点では、車いすに下向きの力が加わりタイヤ痕の印象が強いことから、事故発生地点の確認は容易と考えられる。しかしながら衝突速度の推定は既存の摩擦係数からの算出は難しく、その他の手法を考案する必要がある。
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