2008 Fiscal Year Annual Research Report
塑性ひずみ履歴を受けた鋼構造部材の残存性能推定方法に関する研究
Project/Area Number |
19760384
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
松本 由香 Yokohama National University, 大学院・工学研究院, 准教授 (70313476)
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Keywords | 建築構造・材料 / 鋼部材 / 硬さ / 残存性能 |
Research Abstract |
近年、地球環境問題への配慮から、建築構造物の長寿命化や部材のリュースに対する社会的関心が高まっている。これを実現するためには、被災後の構造物や一旦解体された鋼部材の残存性能を推定し、構造物や部材が継続使用可能かどうかを判定する技術が求められる。一方、小型で携帯可能な硬さ計測機器が開発されたことを受けて、鋼部材の硬さ計測を現場での検査項目として取り入れる動きがある。鋼部材の残存性能を硬さから推定することができれば、建築資材の保全・循環を促進する上で有益である。 本研究は、塑性ひずみによる損傷を受けた建築用鋼部材の残存変形性能を、硬さから推定する手法について検討を行ったものである。昨年度は、SN400材の圧延H形鋼による実大の梁試験体6体を製作し、載荷パターンをパラメータとして繰り返し載荷実験を実施した。今年度は、昨年度の実大実験残材について、継続的に硬さ分布の調査を行った。その結果、梁端フランジ(梁端から60mm程度、スカラップ底付近)の硬さが5%予ひずみ材と同等の場合、梁の残存変形性能は元の性能に対して60〜70%程度が期待できるが、硬さが10%予ひずみ材と同等になると、梁端が破壊する危険があることが分かった。また、実験残材についてスンプ法による金属組織観察を行い、塑性化部において結晶粒界面のずれが明瞭に観察できることを確認した。更に、残材の塑性化部より試験片を採取して素材引張試験を実施し、鋼材の引張特性と硬さとの関係を調査した。その結果、昨年度までの研究にて明らかにしたように、鋼材の残存変形性能と硬さ変化量には明瞭な負の相関が見られ、既往の知見に対して更なるデータインテグレーションを図ることができた。
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