2008 Fiscal Year Annual Research Report
英国の都市協会の活動を対象としたシビックプライド醸成のための都市保全・創造史研究
Project/Area Number |
19760417
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中島 直人 The University of Tokyo, 工学系研究科, 助教 (30345079)
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Keywords | 都市協会 / イギリス / ロンドン / リヴァプール / バーミンガム / 都市美運動 / シティ・ビューティフル運動 / シヴィックプライド |
Research Abstract |
本研究は主に1910年代から1920年代にかけて設立された英国の都市協会(civic society)の、現在に至るまでの活動の経緯を明らかにすることを通して、シヴィックプライドの醸成のための方法論を得ることを目的としている。本年度は、昨年度に引き続き、都市協会に関連する文献調査を実施した。特にイギリス国内で実施した文献調査では、1909年設立のリヴァプール都市組合について、リヴァプール市文書館に所蔵されている委員会議事録や関係の雑誌記事、新聞記事等を収集することで、これまで明らかにされてこなかったその活動の展開過程を把握することができた。その他、リーズ、カーディフ、ブリストルの各都市においても、都市協会関連資料調査を実施した。更に、当時の都市協会の活動を先導したと考えられる都市協会論について、内容を精査した結果、アメリカのように行政府の腐敗もそう深刻ではなかったイギリスにおいては、都市協会はあくまで補完的機能が期待されていたが、その補完とは市民意識を高め、地方分権を押し進めることであったこと、実際に運動を先導した協会の活動も、そうした地方的な問題に限定されていたこと、しかし、リヴァプール都市組合やロンドン協会が郊外地開発の都市計画スキームから既成市街地も含めた都市計画へという展開において、常に行政を先取りする意識で活動を進めていたのに対し、後発のバーミンガム都市協会は行政と歩みを-にしていたことなどを明らかなった。この都市計画との関係性の変化は、その後の現在に至るまでの都市協会の活動を特徴付けることになった。逆に言えば、1910年代から1920年代にかけての都市協会は、現在の都市協会とは異なり、都市計画そのものの理念や技術を先行的に提示し世論を喚起し、行政を導いていくという役割があったのである。
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