2008 Fiscal Year Annual Research Report
イルデフォンソ・セルダ著「都市計画の一般理論」に見る計画理念とその現代的意義
Project/Area Number |
19760421
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
阿部 大輔 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 特任助教 (50447596)
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Keywords | イルデフォンソ・セルダ / 「都市計画の一般理論」 / スペイン / バルセロナ / 街区 / 都市形成 |
Research Abstract |
平成20年度は、「都市計画の一般理論」のさらなる読解とともに、関連する一次資料(1861年出版の「拡張地区についてのいくつかの緒言」など)の読解にも着手し、セルダの計画理論に基づいた拡張市街地形成の概念がスペイン諸都市へどのように伝播したかを解明することに努めた。セルダを正面から扱った論文は現在執筆中であるが、平成20年度は、バルセロナ旧市街の再開発プロセスを分析する論文の一部において、セルダの拡張市街地計画が当時の旧市街に与えた影響を概括した。この中で、セルダが拡張地区の建設に際して構想した不動産を管理する仕組みや受益者負担の原則、住宅のストック活用を実践する仕組み、居住環境を向上するための公的補助のメカニズムといった様々な事業手法は、旧市街ではほぼ適用されることがなかった史実を指摘している。この研究論文は、旧市街と新市街という対比の中で、セルダの計画理念は権利関係が複雑だった旧市街には適用が困難だったことを示唆するものであり、20世紀初頭に各都市に伝播したセルダ理論の特質を解明する基礎的な研究となることが期待される。また、この研究成果により、セルダの拡張地区形成の概念を解き明かす際には、主対象の拡張地区のみならず、旧市街を代表とする既成市街地をも視野に入れ、より総合的な検証が必要であることが判明した。この点は、最終年度に明らかにすることになるセルダ理論の現代的意義を考察するにあたり、重要な論点となろう。なお、一次資料や関連文献の収集ならびに現地の専門家との議論のため、2008年11月-12月に渡西し、現地踏査を実施した。
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