2009 Fiscal Year Annual Research Report
イルデフォンソ・セルダ著「都市計画の一般理論」に見る計画理念とその現代的意義
Project/Area Number |
19760421
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
阿部 大輔 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 特任助教 (50447596)
|
Keywords | イルデフォンソ・セルダ / 「都市計画の一般理論」 / スペイン / バルセロナ / 街区 / 都市形成 |
Research Abstract |
平成21年度は、セルダが直接的にプランの作成・実施に関わったバルセロナだけでなく、その著書「都市計画の一般理論」に影響を受けて同じく拡張地区の建設に取りかかったマドリード、ビルバオ、サン・セバスティアンを取り上げ、19世紀終盤から20世紀における都市建設のプロセスを明らかにした。その上で、現在の市街地における居住環境としての拡張地区の状況を分析した。中でも、90年代後半に整備公社を設立し、セルダの計画理念の大きな柱であった街路と街区の有機的な関係性やパティオ(街区内側の中庭)の漸進的な回復に努めているバルセロナを分析の対象とした。わが国において「都市計画の一般理論」ならびにその著作に至るまでに発表されている数々の理論書の内容を対象とする研究論文は現在査読中であるが、セルダの構想した計画理念ならびに住宅街区の設計、建設プロセスの論考の一部は平成21年度に出版されたバルセロナの拡張地区の維持更新の手法と実態を分析する論文(この研究自体は住宅総合研究財団からの助成により行ったものである)において発表した。なお、資料収集や現地の専門家との議論のため、2009年12月に渡西した。セルダの計画理論の革新性や現代的意義は、物的な空間の計画という視点だけでなく、プランの実現を支える具体的な手法として区画整理手法を提案し、地権者の受益と負担の配分を定め、近代都市計画制度の端緒と考えられているドイツのそれよりも数十年も早く理論整備したこと、都市の整備を空間的・財政的に継続して発展するメカニズムとして捉え、それにウルバニサシオン(都市化)という用語を編み出し、充てたこと、事業の進め方について時代の移行に応じて譲歩しながら内容を修正していく柔軟な理論構築をなしたこと、等にある。
|