2008 Fiscal Year Annual Research Report
インド南北の宗教都市における都市空間の形成・変容過程に関する比較研究
Project/Area Number |
19760439
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Research Institution | Kobe Design University |
Principal Investigator |
柳沢 究 Kobe Design University, 芸術工学研究所, 特別研究員 (60368561)
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Keywords | ヴァーラーナシー / マドゥラィ / インド / 宗教都市 / 住居類型 / ヒンドゥー教 / 街区 / 近隣単位 |
Research Abstract |
本研究は、インドの都市の一類型としての宗教都市の代表例であるヴァーラーナシーとマドゥライを対象に、都市骨格から街区構成、住居に至る空間構成の把握を通じて、インド都市の基層構造の解明に寄与する知見を得ることにある。本年度は、昨年度実施した調査で得られたデータを基に主として住居平面の詳細な分析を行うとともに、最終年度としで研究課題のとりまとめを行った。また日本建築学会において成果の一部を公表した。 ○ヴァーラーナシーの住居について 158件の住居の実測平面図をもとに、近郊村落の住居や同都市の王侯貴族の大規模邸宅「ハヴェリ」との比較を行いながら、その類型化作業を行った。ヴァーラーナシー旧市街の住居は、中庭と3つのダランを備えた中庭式住居が弐基本型であり、中庭式住居一般に共通する特徴の他に、矩形の輪郭、方形に近い中庭形状、中庭を中心にダラン・居室を配する同心的構成、街路から中庭に至る段階的構成、南向きの入口を避ける傾向、が指摘できる。前四者はハヴェリや近郊村落の住居にも共通する傾向である。方位性については、ヒンドゥー教の方位観の反映と推測される。 ○マドゥライの住居について 119件の住居の実測平面図をもとに、近郊村落の住居との比較を行いながら、その類型化作業を行った。マドゥライの都市住居は、入口から諸要素が中心軸上に並び、その両脇に諸室が配された左右対称の平面構成を基本とする。住居平面は、構成要素の配置によって、「街路型」四種と「路地型」の五類型に分けることができ、これらは建設年代にかかわず、主として住居規模と面する街路の性質に対応しており、住居平面と街路構造との相関性が伺われる。そのうち構成要素を欠かさず揃えた基本型と見なせるものは、ナダィを有しクーダムが中央に位置する中規模以上の「街路型」であり、これらは近郊村落や南インドの他都市の住居にも共通する特徴を有している。
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