2008 Fiscal Year Annual Research Report
近代サハリンにおける社会変動と市街地変容(ユジノ・サハリンスクを中心に)
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19760443
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
井澗 裕 Hokkaido University, スラブ研究センター, COE共同研究員 (10419210)
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Keywords | 建築史・意匠 / 都市計画 / サハリン史 / 日口関係史 / ソビエト連邦史 |
Research Abstract |
本研究では、ユジノサハリンスクの市街地変容の特性として、日本時代初期に建設された豊原市街地の城下町的特質について、同様の性質を持つ札幌の初期市街地との比較に基づいて、その変容過程の違いを明らかにした。札幌ではすぐに消失した城下町的特質が豊原においては日本植民地時代の終焉まで維持されていたこと、それが豊原を接収したソ連軍幹部に「住宅の階級的格差」として報告されていたことなどを明らかにした。 また、市街地変容の過程を小樽や札幌など北海道の地方都市と穂比較対象を視野に含めながら、国際交流基金とサハリン州行政府の要請を受けて、日本期建造物の保存と活用の方策に関する政策提言を行った。具体的には日本期建造物の現存状況に関する全容把握がサハリン州ではなかれておらず、重要な歴史的建造物が集中するユジノサハリンスク北部の旧豊原氏が一界隈においても、日本期建造物に対するサインボードやパンフレットなど広告活動が不足しており、また景観保全に関する市民の関心を惹起するような施策の面でも課題が多いことを指摘した。市街地変容過程の中で旧体制下における物質的遺産の活用と保護にあたり、日本での施策や成果を参照しつつ総合的かつ長期的な保存計画を立案する上で、そのフレームワークを提出し得たことは日口友好の面でも大きな成果と考える。 ソ連時代以降の都市計画については、極東地域全体との住宅建設活動面からの比較考察や、ミクロライオン単位での市街地構造の特質の分析、建設活動において中心的な役割を果たしたOAOサハリングラジュダンプロエクトの活動の歴史的側面などを明らかにした。 具体的にはサハリンにおける住宅建築およびミクロライオンの建設事業については、1960年代と80年代で大きな格差が認められる。集合住宅の大規模化とともに、建築の質的低下と共用オープンスペースの形骸化、コミュニティの分断下が顕著に認められる。
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Research Products
(3 results)