2010 Fiscal Year Annual Research Report
京都の伝統的木造建築に用いられた木材に関する調査・研究-材種・用法・流通について
Project/Area Number |
19760448
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
松田 剛佐 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 助教 (20293988)
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Keywords | 建築史・意匠 / 建築生産 / 近世林業史 / 木材流通 / 木材規格 |
Research Abstract |
林政史関連史料から、近世の林野利用の概要と木材の生産状況に関して研究した。即ち林野制度の概要を分析するなかで、林野の所有・利用形態の公私に注目できることが明らかになり、これにより公的な飛騨国の御用材と私的な丹波国の商人材に着目し、それぞれの代表的な歴史的事例を比較・検討することで、木材の生産状況を分析した。 近世の林野は幕府領と諸侯の分領に大別され、藩ごとに制度の特色があったことが確認できた。御林はあくまで公的に管理されたが、その収益は、御用材が入札されたり払い下げられたりする18世紀初頭ころから、公的なものに留まらなくなったことが確認できた。払い下げの事例では、良材を除くという前提でも「二間木尺廻」が年間1万~1万45千本というものがみられた。 飛騨の御用材の木材生産は、細かく規格が決められていたことが確認できた。特に「角物」と「平物」は長さ2間が規格の基準であることが推察された。「板子」と「榑木」は長さ6尺5寸が基準であり、これは木曽材とほぼ同じ状況であった。商人材である丹波材は、大堰川水運に関係した生産者側での木材規格は13尺2寸の2間材が主流であったと考えられた。なお流通量の多い2間材で杉と松の値段が安価に設定されていたことも確認できた。陸路による丹波材流通では1間半材が多く、次いで多いのはやはり2間材であった。丹波材流通では御用材ほど細かい規格の類型は確認できなかったが、史料には末口3寸~1尺5寸の丸太が多くみられた。また角木は「才」、丸太は「本」、貫は「丁」、板は「間」と数量の単位が異なるため、この4種類の規格は明確に区別されていたことがわかった。なかでも「土伝」と称された良材は、1丈4尺と特に長さが決められていた。 御用材の流通量とその体制および公的造営の実例との関係の検討および、他地域も含んだ商人材の消費状況を加味したより具体的な考察が、今後の課題である。
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Research Products
(2 results)