2008 Fiscal Year Annual Research Report
美術館建築におけるホワイトキューブと場所性の獲得に対する建築家の取り組みについて
Project/Area Number |
19760451
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
竹内 志保子 (小池 志保子) Osaka City University, 大学院・生活科学研究科, 助教 (10433294)
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Keywords | 美術館建築 / 展示空間 / ホワイトキューブ |
Research Abstract |
本研究は、20世紀の理想の展示室とされる「ホワイトキューブ」をひとつの指標として、戦後の日本における美術館建築について分析をおこなうものである。特に、社会や時代に応じて変化する「美術館」という概念の具体的な存在としての美術館建築に着目し、考察を試みた。今年度は以下の2つのテーマについて研究を行った。第一に、建築家による建築作品の発表の場である建築雑誌メディアにおいて美術館建築が発表された場合、そこで建築家が語る美術館の展示室像について昨年度から引き続いて整理を行った。事例としては、日本で最初の近代美術館である神奈川県立近代美術館以降の県立、市立、町立美術館のうち、複数の建築メディアに掲載されているものを中心とした58館を対象とした。その内訳は、50年代に竣工したものが2館、70年代が8館、80年代が15館、90年代が22館、2000年代が11館である。第二に、その対象美術館の展示空間が、「ホワイトキューブの展示室」の規範(天井光源、開口部なし、壁が白い、閉じた箱状の部屋)とどれだけ合致するか、あるいは、一致しないかについて整理し分析した。規範を基準として展示室を読み解くと、次の8項目が展示室で重視されていることが分かった。a)抽象化した空間、b)相応しい材料・寸法・光環境、c)展示室のバリエーション、d)展示室間の関係、e)自然光による変化、f)屋外展示場と一体化する開口、g)風景を切り取る開口、h)空間の立体的連続。いずれの項目でも、美術作品を鑑賞する空間そのものの体験を重要視する考え方が背景にあると考えられる。以上、2つのテーマに基づき・「ホワイトキューブ」をひとつの尺度として用いることで、近代以降の日本の公立美術館における展示空間の変遷を確認した。
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