2007 Fiscal Year Annual Research Report
アンシアン・レジーム期におけるソフト・パワーとしての王権建築とその様式伝播
Project/Area Number |
19760452
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
中島 智章 Kogakuin University, 工学部, 准教授 (80348862)
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Keywords | ヴェルサイユ / 舞台装飾 / バロック / 宮殿 / 庭園 / ヴィガラーニ / ル・ヴオー / テュイルリー |
Research Abstract |
「バロック建築のリサイクルーカルロ・ヴィカラーニの舞台建築-」 「カルロ・ヴィガラーニによるテュイルリー宮殿付属劇場の舞台建築のリサイクル」 意識的か無意識的かにかかわらず、ヨーロッパの建築は、建築は永続しなければならないというウィトルウィウスの考え方に基づいている。また、石や煉瓦、コンクリートといった「恒久的」な材料が用いられることが多いことと相まって、リデュースはともかく、リサイクルやリユースにはなじみにくいように思われる。むろん、ローマのコロッセウムをはじめとする古代ローマ時代の建築が、中世、ルネサンス、バロック時代を通じて有力な建築材料の供給源であった歴史的事実はあるが、このような事例はリサイクル、リユース、リデュースという正の側面でとらえられるよりは、文化財の破壊という負の側面でとらえられることの方が多い。 だが、以上のような見方はヨーロッパ建築といえば石や煉瓦、コンクリートでできているものだという単眼的な理解を前提としている。たしかに、ヨーロッパにも民家などの木造建造物の系譜も存在し、20世紀半ば以降のヴァナキュラーなものに対する関心の高まりを受けて、その保存修復の手法や制度に対する関心も絡み合いながら、近年大きく注目されている。だが、これらはウィトルウィウスが論じたような、また、近世・近代的意味での建築家が創造するいわゆる「建築(ARCHITECTVRA)」の範疇でとらえられるようなものではないのも確かである。 一方で、ヨーロッパの木造建築の系譜のなかに、ヴァナキュラーなものではなく、建築家の創造するいわゆる「建築」に属するものがないわけではない。16世紀末以降18世紀前半まで続くバロック時代に花を咲かせた舞台のよの建築がそれである。これらは通常はその場限りの束の間のものという視点で語られることが多く、実際、概念の上ではそれは正しいのだが、運営面では必ずしもそれがすべてだとは言い切れない。上記2稿(書誌データは次ページ参照)では、イタリアで生まれたバロックの舞台芸術をフランス王国にもたらした舞台建築家のなかでも最も重要だといわれるカルロ・ヴィガラーニ(Carlo VIGARANI, Charles VIGARANI)とその舞台芸術を紹介し、当時のスペクタクル制作のあり方という視点から、これら「つかのまの」舞台建築のリサイクルについて論じる。
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Research Products
(3 results)