2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19760454
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
小岩 正樹 Waseda University, 理工学術院, 助手 (20434285)
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Keywords | 建築史 / 日本古代史 / 意匠 / 様式 / 建築生産 / 設計図書 |
Research Abstract |
本年度は各史料に登場する「様」の性格を明らかにすべく、事例の収集を継続して行い、同時に各事例の実際を復元して、造営現場における「様」の機能について多角的に検討を加えた。検討は、収集できた事例の結果、主に八世紀中後期が中心となった。得られた成果をまとめると、以下となる。 1「様」の事例の拡大 事例収集の結果、史料上に明記される数は少なく、また登場の仕方に偏りがあることが分かるが、これは「様」は建築造営の際に授受された具体的な資料であることから、国史などの史書に取り上げられにくいためと考えられる。そこで、国分寺や大安寺といった古代史上よく知られた建築造営の記録を取り上げ、造営図書の比較検討を行い、解釈を拡大するとともに、「様」の性格の解明の助けとした。結果的に、古代造営のなかで「様」と類似する手本・参考資料がより一般的に用いられていた可能性を示唆した。成果は学術論文として投稿し、学会発表を行った。 2「様」の機能の解明 一般に設計から施工へと段階的に進行する造営過程のなかで「様」の果たした機能を明らかにすべく、まずは計画段階において使用された事例を取り上げて検討した。寺院建築の造営に際して僧侶が作成した「様」を対象とした結果、「様」は発願者との関係を結ぶ計画資料として、意匠決定に貢献していた点を確認した。また「様」はその作成者に対しては、造営組織内における地位を保証すると同時に、その造営の持つ意義の大きさに従って業績となることを論じ、「様」の帯びていた社会的な影響力について明らかにした。本成果については、学術論文としての投稿と学会発表の準備を進めている。
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