Research Abstract |
Tbit/inch^2級の超高密度磁気記憶素子への応用を目指して,交換磁気異方性を用いた磁性ナノ粒子の磁化の熱安定性の改善について検討した.今年度は,特に,交換磁気異方性を発現する系として,酸化物反強磁性体Cr_20_3薄膜を用いた磁性超薄膜の磁化の熱安定性について検討した. (1)超高真空中でのその場処理による,高品位Cr_20_3薄膜作製に関する検討を行った.種々の酸化物基板上にエピタクシアル成長させたCr薄膜を,in-situ高純度酸素雰囲気中で熱処理することにより,結晶質のCr_20_3薄膜を作製することに成功した.また,酸化前のCr薄膜の結晶配向性を変化させることにより,Cr_20_3薄膜の結晶配向性を変化させることに成功した.さらに,Cr-20_3(0001)薄膜の形成には,酸化前のCr薄膜の膜面内エピタクシアルバリアント数の制御が重要であることが分かった. (2)Co超薄膜の磁化の熱安定性と,反強磁性Cr-20_3薄膜のCrスピン方向の関係について検討した.Cr-20_3薄膜の膜面垂直方向の結晶配向性を(0001)方向とすることでCrスピン方向を膜面垂直方向とした場合,Coの室温における磁気状態は超常磁性状態となった.磁化の熱安定性は,非磁性のAl_20_3(0001)上に作製した場合と比較して,約160K上昇した.また,Coの磁化は,Crスピン方向と平衡となる膜面垂直方向に安定となることが分かった.Cr_20_3薄膜の膜面垂直方向の結晶配向性を(1010)方向とすることでCrスピン方向を膜面垂直方向とした場合,Coは室温で強磁性状態となり,室温での磁化の熱安定性が大幅に改善された.また,Coの磁化は,Crスピン方向と平衡となる膜面内方向に磁化容易方向となり反強磁性体のスピン方向により,強磁性超薄膜の磁化方向を変化させることに成功した.
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